■ 製法と種類
エチレン(CH2=CH2)を重合することでポリエチレン(PE)(-CH2-CH2-)n ができる
工業化されている製法として、高圧法と低圧法に大別できる
◆ 高圧法低密度ポリエチレン (LDPE)
高温 (150~350℃)・高圧 (100~250MPa) 下でエチレンと開始剤とも呼ばれるラジカル発生剤 (O2, H2O2 等) を用いてラジカル重合させるもので、分子内で分岐を多く持ったPEが得られる
分岐が多くあることから、密度は比較的低く、その製法とともに高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)と呼ばれる
LDPE は、反応器の形状によって槽型(ベッセル/オートクレーブ)法と管型(チューブラ)法に分類できる
- 槽型(ベッセル/オートクレーブ)法
槽型法は、反応機内での強攪拌および対流によって、ポリマーとラジカル開始剤および成長ラジカル末端での接触確率が高いことに起因して、連鎖移動が起きやすくなり、高分子量成分や長鎖分岐成分が多くなる
物性としては、押出加工時の溶融張力が大きくなったり(=ネックインが小さくなる)、フィルムにした際、透明性が低下する傾向にある
- 管型(チューブラ)法
管型法は、重合が管の中を流動しながら反応が進むため、ラジカルの連鎖移動が起きにくく、槽型法と比べて単純な分岐構造となる
また、一般的に高温 (~330℃) の反応ゾーンがあるため、低分子量成分を生成しやすい
物性としては、押出加工時流動性が良好で、フィルムにした際、透明性が良好になる
◆ 低圧法高密度ポリエチレン(HDPE)
高圧法と比較して低温(60~100℃)・低圧(1~3MPa)の重合条件で、遷移金属触媒を用いてイオン重合させるもので、エチレン単独で重合すると直鎖状でまったく分岐のないポリエチレンが得られる
密度は比較的高いので低圧法高密度PE(HDPE)と呼ばれる
用いられる触媒には、シングルサイトのチーグラー系触媒やマルチサイトのメタロセン系触媒がある
◆ 低圧法直鎖状低密度ポリエチレン (LLDPE)
高密度ポリエチレンと同じ低圧法で、エチレンとともにαオレフィンと呼ばれる1-ブテンや1-ヘキセンを共重合させることで、PEの分子鎖中に”トゲ”のような短鎖分岐を導入し低密度化した直鎖状低密度PE(LLDPE) も製造されている
なお、触媒の種類やαオレフィンの種類・量によって、得られるLLDPEの強度や密度をコントロールすることが可能である
また、2000年代以降、改良されたメタロセン系触媒を用い、一部長鎖分岐を導入し加工性を改良したPEが上市されている
Fig. ポリエチレンの製法による分類
Fig. 高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)の構造及び性質に及ぼす製造プロセス(反応器の種類)の影響
Fig. LDPEの分子量分布に及ぼす製造プロセス(反応器の種類)の影響