開発者インタビュー非シリコーン剥離紙開発
開発者インタビュー
非シリコーン剥離紙開発
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まず簡単に自己紹介をお願いします。
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開発者S氏
私は2014 年4月の入社です。最初技術課に配属され、この製品を担当していました。
その後2022年9月に異動となり、現在は品質管理課に所属しております。 -
開発者I氏
私は2018年4月の入社以来、現在も技術課に所属しています。
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ではまず、非シリコーン系剥離紙はどういうところで、どんな使われ方をして、どういう展開があるのか教えて下さい。
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開発者S氏
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非シリコーン系剥離紙はおもに電子材料の分野、フレキシブルプリント回路(FPC)基板などで使用される接着剤付きポリイミドフィルムの接着剤面の保護などに用いられています。
この用途にケイ素分を含むシリコーン系剥離紙を使うと、ケイ素分が接着剤に移行し、出来上がったFPC基板に通電させたときに導電不良が発生することがあるため、非シリコーン剥離紙が使用されます。
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当社で開発するにあたって、どのように取り組んできたのか教えてください。
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開発者S氏
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私か技術課で取り組んだ課題とその解決事例をお話しします。
当時、非シリコーン系剥離紙を使用の際、接着剤を貼り合わせると経時とともに剥離が重くなってしまうという不具合(=重剥離)が起きていました。
そもそもなぜ重剥離が起こるのかというと、剥離剤と接着剤が反応してしまうというのが原因なのですが、こういった不具合をなくすためにどうすればいいかということを考えました。
いろいろ検討した結果、剥離剤層の表面に剥離剤の未反応物が残っていて、それが接着剤と反応して重剥離化するということを見出しました。 -
剥離紙を製造する際に、剥離剤を塗工した後、オーブンで熱を掛けて、剥離剤中の溶剤を揮発させ、さらに熱を掛けることで剥離剤成分が反応し、硬化します。
熱を加えるほど剥離剤の反応が進むので、未反応物が残らず重剥離を防ぐことができます。 -
一方、剥離紙は目止層としてポリエチレン樹脂を使用していて、その融点は105~130℃ですので、融点以上に熱を掛けすぎるとポリエチレンが発泡したり、溶融して表面の平滑性が損なわれたり、剥離紙がカールするといった不具合が発生します。
剥離紙の構成 -
そこで、適度な熱の掛け方でも未反応物が残らない方法を考えることにしました。
具体的には、別の添加剤を少量添加し、残った未反応物と反応させることで、剥離紙製品中に未反応物を残さないようにすることを考えました。
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検討された中で苦労された点を教えてください。
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開発者S氏
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一つは、当社の製造条件に適合し、かつ重剥離しない剥離紙となるように、温度が低くても反応し、未反応分をつぶす添加剤を片っ端から試していきましたが、適した材料にたどりつくまで非常に苦労しました。
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もう一つは、材料が決まった後、添加量について試行錯誤したことです。添加量が少なすぎると未反応分が残りますし、添加量が多すぎると今度は本来の剥離剤の反応を阻害してしまうということがわかってきました。添加量の見極め、適量を見つけるところが苦労しました。ですが、それをやってうまくいったときには達成感があり、やりがいもあったと感じております。
最適な添加剤を適切な量を入れることによって、剥離紙として外観不良が起こらず、客先での使用時に重剥離が起こらず、本来の性能を発揮する剥離紙が開発できました。
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この技術は、特許も出されていたのですね。
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開発者S氏
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はい。2016年に特許出願しています(特開2018-089955)。
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続いて、開発者Iさんにお伺いします。この開発をきっかけに非シリコーン系剥離紙は、最近いろいろな品揃えをされているようですが、ご説明いただけますか?
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開発者I氏
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以前からの当社の弱みとして非シリコーン系剥離紙のラインナップが少ないという点がありました。
お客様からの要望に応えられないケースがあったことから、要望に幅広く応えられるよう、使用する剥離剤の種類を増やし、ラインナップを充実させてきています。実際には、剥離剤メーカーさんにご協力いただき、新製品開発に一緒に取り組んでいます。
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苦労した点とかはありますか。
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開発者I氏
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苦労した点としては、剥離剤の種類によって性状や濃度が異なるため、利用できる希釈溶媒の選定や適切な塗布量の見極めが挙げられます。また、剥離紙としてのきちんとした性能を発揮するための検討や作業者の皆さんにあまり負担とならないような製造条件を見出すことなどあらゆることを考える必要があり日々苦労しています。
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最後に今後の展望について一言ずつお願いします。
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開発者I氏
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現在はいろいろな剥離強度をカバーする非シリコーン系剥離紙がラインナップされるようになってきました。今後とも、お客様の要望に応えられるよう頑張っていきたいと思います。
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開発者S氏
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現在は、品質管理課に所属している観点から、日々の品質維持・向上はお客様の満足につながります。高品質の製品づくりに貢献できればと思います。
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ありがとうございました。